みんなの金融リテラシー

大学生のための金融リテラシー教育

大学で実際に行われた授業から、金融リテラシー教育の取り組みを紹介します。

転職の前に知っておこう! ライフプランとお金のはなし

会社を辞める前に、頭に入れておいてほしいことがあります

転職を考えるならば、今後の働き方による税金や保険のことも知っておきましょう。備えあれば憂いなし。あなたが選んだ未来は、きっと輝くものになるはずです。

みなさんこんにちは、経済エッセイストの井戸美枝です。お金にまつわる“知っておきたい、ちょっといい話”、第5回は「転職にまつわるライフプランとお金」についてお話しましょう。

あなたは、いまの仕事に満足していますか?

厚生労働省「新規学卒者の離職状況に関する資料」によると、大学を卒業して就職した人のうち10人に3人は3年以内に会社を辞めています。これを読まれている方の中にも、転職を考えている方がいるかもしれません。

転職先ではどのような雇用形態になるのか…正社員、派遣社員、専門的な技術を会得するためにアルバイトとして働く方も。はたまた起業する方は自営業者ということになります。

働き方は色々ありますが、どのような働き方をするかによって支払う税金や保険料は違います。職を変えるその前に知っておきましょう。

それでは、転職にまつわるお金のキホンチェック! クイズに答えてみてくださいね。

問題1
会社を辞めて、独立することになりました。自営業者になると、払わなくてよい保険料はどれでしょうか?
 1.健康保険料
 2.雇用保険料
 3.国民年金保険料

問題2
派遣社員として働いていましたが、派遣先に雇われて正社員として働くことになりました。新たに加入できる社会保険の制度はどれでしょうか?
 1.厚生年金
 2.企業年金
 3.雇用保険

問題3
転職活動のため、3年間勤めた会社を辞めることにしました。失業保険を受け取れるのは、ハローワークで申請をしてから何日後でしょうか?
 1.7日後
 2.1ヶ月後
 3.3ヶ月と7日後

答え合わせをしてみましょう!

問題1

答えは2.雇用保険料です。

雇用保険は、民間の会社で働く人が加入する保険で、失業したときにいくつかの条件を満たせば、再就職するまでの間、一定額のお金を受け取ることができます(失業保険)。ですので、自営業者は支払いません。

前ページのクイズの場合ですと、会社を辞めて起業するまでの間、収入がなくなるかもしれませんよね。その間、失業保険は受け取れるのでしょうか? ・・・残念ながらもらえない可能性が高いでしょう。

職を求めていることが条件なので、起業の準備を始めたときから失業者ではない、と考えられるからです。

ただし、雇用保険には、退職後にも受給できる「教育訓練給付」や「創業促進補助金」など自営業を始めた後に利用できるものもあります。

該当する場合は上手に活用しましょう。

1.健康保険料は、日本に住む国民は全員が何らかの健康保険に加入しなければなりませんので、会社を辞めても支払います。

一般的には、会社の健康保険をやめて、国民健康保険に新たに加入することになります。

3.国民年金保険料も支払う必要があります。

ただし、収入がない場合は、年金事務所に届け出ることで、免除や減額をしてもらえることがあります。届け出をしないと「未納」となり、年金を受け取れなくなってしまうこともあるので注意してください。

問題2

答えは2. 企業年金です。

企業年金は、会社が従業員(正社員)の退職金を積み立てる制度です。

よって、派遣社員から正社員になると加入できることになります。ただし、公的年金とは異なり、企業年金はあくまでも会社の福利厚生の一環です。会社によっては、この制度がないことも…。

現在採用されている企業年金は、「確定拠出年金(企業型)」「確定給付企業年金」「厚生年金基金」の3種類です。

1.厚生年金と3.雇用保険は、派遣社員の時から派遣元の会社で加入しているはずです。正社員になっても、新しい会社で引き続き支払います。

問題3

答えは 3. 3ヶ月後と7日後 です。

失業保険を受け取るには、「12ヶ月以上雇用保険に加入していること」「働く意思があること(求職活動を行っていること)」などの条件を満たさなければなりません。3年以上勤めていたので、ひとつめの条件はクリアです。

つぎに、働く意思があることを示すために、ハローワークで求職の申し込みをする必要があります。

ここから本題ですが、失業保険は失業後すぐには支給されないようになっています。ハローワークで求職の申し込みをした日から7日間は「待期期間」とよばれ、失業保険はもらえません。

会社が倒産したり、解雇されたりした場合は、この7日間の「待期期間」が終了すると給付を受け取ることができます。が、転職活動のために会社を退職した人は「自己都合」での退職となり、さらに3ヶ月後の「給付制限」期間が設けられます。

ですので、この問題のケースですと3ヶ月と7日後に失業保険を受け取ることになります。

転職するときのお金にまつわる注意点!

「別の会社に転職する場合」「会社を辞めて、フリーランスになる(もしくは起業する)場合」の注意点をまとめました。

1)別の会社に転職する場合。

やむを得ない事情がない限り、転職活動は会社に勤めながら行いましょう。

前述した通り「自己都合」で会社を辞めた場合、失業保険がもらえるのは退職してから3ヶ月と7日後です。退職金などが出れば良いですが、およそ3ヶ月間は無収入ということになります。

生活費、家賃、交通費など、転職活動中もお金はかかります。

リクナビNEXTの2015年の調査によると、退職後に転職活動を始めて、かかった資金の平均金額は71万3920円でした(出典 リクナビNEXT「転職成功のための資金計画」)。 お金が減っていくと、早く働き先を見つけなくては…というプレッシャーもかかってしまいますよね。焦ってしまい転職前よりも条件の悪いところへ就職してしまうかもしれません。

今よりも良いと思える会社が見つかるまで辞めないこと。これが大切です。ただし、今の勤務先で体を壊してしまうような危険がある場合は別です。

2)会社を辞めて、フリーランスになる(もしくは起業する)場合。

フリーランスや個人事業主になると、銀行やカード会社における信用力がなくなります。そのため、住宅ローンの借入や借り換え、クレジットカードの発行を考えている場合は会社に勤めている間に行った方が良いでしょう。

会社を辞めたあとの税金・保険料にも注意が必要です。

住民税は前年度の所得額で算出されます。会社を辞めて1年目は(収入がなくても)会社員時代の住民税を払わなくてはなりません。

健康保険料は、会社が負担していた分(保険料の半分)を自分で支払うことになりますので負担は大きくなります。

これらのことを考えると、会社を辞めて自営業を始めるときは1年間収入がなくても暮らせるくらいの貯金があれば安心です。

文/井戸美枝 イラスト/いいあい

この記事は、日経ウーマンオンライン(http://wol.nikkeibp.co.jp/)に 2016年5月25日に掲載されたものです。無断複製・転載を禁じます。(C)日経BP社