みんなの金融リテラシー

金融リテラシー入門:テーマ「住宅購入」ダイジェスト版

全15章からなる「金融リテラシー入門」の講座のうち、「住宅購入」の授業をダイジェスト版でお届けします。

突然襲う病気や事故 知っておきたい制度とお金のはなし

人生にはリスクがつきもの 突然の事態にも対応できる女子になろう

日ごろコツコツと貯蓄をしていても、突然の病気や事故の際は貯蓄では間に合わないことがあるかもしれません。もしもの事態に備えつつ、セーフティーネットがあることも知っておきましょう。

みなさんこんにちは、経済エッセイストの井戸美枝です。お金にまつわる“知っておきたい、ちょっといい話”、第8回は「突然の病気や事故とお金」についてお話しましょう。

人生にはリスクがつきもの。何が起こるかわかりません。ケガをしたり、病気にかかったり…時には仕事を休まなくてはならないこともあるでしょう。そんなとき、できるだけお金の心配はしたくないですよね。

今回は、もしも病気やケガで働けなくなってしまったとき、どんなセーフティーネットがあるのかについてお話しします。頭の片隅に「こんな制度があるんだ」ということを置いておいてもらえれば、いざというとき焦らずにすむかもしれません。

それでは、病気や事故にまつわるお金のキホンチェック! クイズに答えてみてくださいね。

問題1
正社員として働くAさんは、会社へ行く途中に転んで骨折。入院し、しばらく仕事を休むことになりました。この場合、Aさんに保障はあるのでしょうか?
 1.なし
 2.お給料の2/3が支給される
 3.お給料の4/5が支給される

問題2
正社員として働くBさん。休暇中にスキーで転倒してしまい骨折。入院することになりました。保険適用前の手術費用は100万円。病院で実際に支払う金額はいくらでしょうか?
 1.約20万円
 2.約15万円
 3.約9万円

問題3
休暇中のスキーで骨折し、入院したBさんは、しばらく会社に行けそうにありません。お給料が出ない間、Bさんには何か保障はあるのでしょうか?
 1.なし
 2.お給料の2/3が支給される
 3.お給料の4/5が支給される

答えあわせをしてみましょう!

問題1

答えは3.お給料の4/5が支給されるです。

会社へ行く途中、つまり「通勤途中」にケガや病気をした場合は、労災保険による「休業給付」を受け取ることができます。

1(労災保険のおもな給付)

このように、労災にはさまざまな給付があります。特別支給金(一時金)や傷病特別年金という制度もあり、ストレスによる「精神障害」や「脳や心臓疾患」にも適用されることがあります。

問題2

答えは3.約9万円です。

日本の健康保険では、医療費が高額になったとき、家計を圧迫することがないように窓口で支払う自己負担額に上限が定められています。これを「高額療養費制度」といいます。

高額療養費制度とは

自己負担の限度額はそれぞれの収入によって異なりますが(下の図参照)、この限度額を超える医療費を支払った場合は、申請すれば差額分を返金してもらうことができます。

2(高額療養費の限度額)

年収370万円〜770万円、標準報酬月額約28〜50万円で計算

標準報酬月額とは

標準報酬月額は、簡単にいうと4〜6月のお給料を平均して、50段階に分けた等級表にあてはめたものです。

年収が370万円〜770万円の方の場合は、標準報酬月額でいうと約28〜50万円の等級ですので、高額療養費制度後の自己負担限度額は8万7430円です。

3(高額療養費 自己負担額の計算)

このクイズの場合、高額療養費制度がなければ100万円の手術費の3割、30万円を支払わなくてはならないところ、21万2570円の払い戻しを受けることができます。

事前に高額な医療費を支払うことが分っている場合、「限度額適用認定証」を病院に提出すると窓口での支払いを自己負担限度額だけで済ませることができます。

限度額適用認定証は、自分が加入している健康保険に申請して交付してもらいましょう。

ただし、高額療養費制度の対象は「健康保険が適用される治療」のみ。健康保険適用外の先進医療などは対象ではありません。そのほか、差額ベッド代や食事代、美容整形の手術なども対象外です。

問題3

答えは2.お給料の2/3が支給されるです。

休日など仕事をしていないときに、ケガをしてしまい働けなくなった… 勤務先からはお給料がもらえない…。そんな場合に休業中の生活を保障してくれるのが「傷病手当金」です。

そう、勤務外のケガや病気でも給付されるお金があるのですね。この傷病手当金は、皆さんが毎月支払っている健康保険から給付されます。

ただし、傷病手当金は、会社へ行くタイミングによっては給付が始まりません。次のページで詳しく解説しましょう。

では、問題3で取り上げた「傷病手当金」について、くわしくみてみましょう。

傷病手当金をうけとるときの注意点

傷病手当金は、勤務外での病気やケガで働けなくなり、十分にお給料をもらえなくなったときに支給されます。

傷病手当金の支給が開始されるのは、「連続して」3日間会社を休んだあとの4日目からです。この「連続して」3日間というのがポイントです。途中で会社に行ってしまうと、給付が始まらないのです。

4(待期期間の完成について)

連続して休んだ3日間には土日・祝日・有給休暇なども含めることができます。

そして休業して4日目から支給が開始され、最長1年6ヶ月間受け取ることができます(医療機関の入院に限らず、自宅での療養でもOKです)。

傷病手当金の支給額は「標準報酬日額」の2/3の金額です。 標準報酬日額は、支給日開始以前の12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30(日数)で割ったものです。

休業中も会社からお給料が出ている場合は、傷病手当金よりも少なければ差額が支給されます。もし、お給料が傷病手当金よりも多い場合は支給されません。傷病手当金はあくまでも「生活を保障する」ための制度。十分な収入がある場合には支給されないのです。

本当に必要か 保険を見直してみよう

このように、ケガや病気で収入が途絶えてしまっても、私たちの暮らしを保障してくれる国の制度があります。

民間の傷害保険などに加入している方は、その保障が本当に必要かどうか、毎月の掛け金を支払うだけの保障があるのか…など、一度見直してみるのも良いかもしれません。

気になる点は、健康保険の適用外である治療を受けなければならなくなったとき。たとえば、がんの先進医療などがそうですね。高い確率ではありませんが、高額な治療費を全額負担しなければならないこともあるかもしれません。不安に思う方は、民間の医療保険(がん保険など)に加入しても良いでしょう。

クレジット

イラスト/いいあい

プロフィール

井戸 美枝(いど・みえ)

井戸美枝事務所代表

講演のほか、TVやラジオなどへの出演を通して資産運用やライフプランについてのアドバイスを行う。経済エッセイストとしても活躍。『マンガでまる分かり! 申請するだけでもらえるお金』(幻冬舎)など著書多数。

この記事は、日経ウーマンオンライン(http://wol.nikkeibp.co.jp/)に 2016年7月6日に掲載されたものです。無断複製・転載を禁じます。(C)日経BP社