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金融リテラシー入門:テーマ「住宅購入」ダイジェスト版

全15章からなる「金融リテラシー入門」の講座のうち、「住宅購入」の授業をダイジェスト版でお届けします。

給付金がもらえる条件とは?出産退職する前に、知っておきたいポイント

退職日で明暗が分かれることも! 出産にまつわる給付金をチェック

こんにちは。社会保険労務士 佐佐木由美子です。出産のために退職する場合、知っておくと得する情報をチェックしましょう。

出産育児一時金はどこからもらう?

出産のために、やむを得ず退職する方・・・もいらっしゃることと思います。ちょうど先程も、退職予定の女性社員からご相談がありました。出産退職で多いご相談は、退職後の健康保険はどうなるか、また給付金はもらえるか、といったものです。

こうした問題は「難しいから」と後回しにしてしまうと、知らないうちに損をしてしまうこともあり得ます! 事前にポイントをおさえて、しっかりと手を打っておきましょう。

出産するために退職する場合、すぐに働くことはできませんので、社会保険はご主人の扶養家族となるのが一般的です。

この場合、ご主人の勤務先の会社へ、妻がまもなく出産退職して扶養家族となることを伝えてもらい、健康保険と国民年金第3号被保険者の手続きを行ってもらえるように準備しておきましょう。こうすることで、退職後すみやかにご自身の新しい保険証を受け取ることができます。

出産に関しては、子ども1人につき、原則として42万円の「出産育児一時金」を健康保険からもらうことができます。これは、自分の健康保険から受け取れるのか、それとも夫の健康保険から受け取れるのか・・・もしかしたら、両方から!? といった疑問があるかもしれません。

退職日までに、継続して1年以上健康保険の被保険者期間があり、退職日翌日から6か月以内の出産であれば、資格喪失後の継続給付として、退職前の会社の健康保険から給付を受けることができます。

つまり、要件を満たしていれば、自分が加入していた健康保険組合に請求することもできますし、夫の健康保険組合にも請求することができるのです。ただし、重複してもらうことはできませんので、いずれかひとつを選択しなければなりません。

そこで、ぜひ検討したいのが、どちらの健康保険を利用した方が、よりメリットを受けられるか? ということ。社内結婚であれば同じ健康保険なので比較する必要はありません。チェックしたいのは、夫婦でそれぞれ別の健康保険組合に加入している場合です。

というのは、健康保険組合によって、給付額に差があるからです。付加給付が受けられる健康保険組合では、42万円にプラスして10万程度もらえる場合もあるため、事前にそれぞれ給付額を確認しておくとよいでしょう。

出産育児一時金には、出産後に請求するオーソドックスな方法のほかに、直接支払制度や受取代理制度もあります。これは出産する病院によっても利用が異なりますが、直接支払制度を利用すると、出産育児一時金の請求を本人に代わって医療機関が行い、直接医療機関にお金が支払われるので、出産費用は42万円を超えた差額を支払えばよく、非常に便利です。

もし、妊娠中に自分の健康保険で直接支払制度の利用を医療機関に申し出ているものの、夫の健康保険から出産育児一時金を受け取りたい場合は、早めに医療機関に相談して手続きを確認しておきましょう。

出産手当金は、退職日に要注意!

出産のために退職する場合でも、「出産手当金」をもらえる場合があります。出産手当金は、出産(予定)日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産後56日の間に出産のために仕事を休み、給与の支払いがなかった期間を対象として、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。

あまり知られていませんが、退職した場合でも次の2つの要件を満たしていれば対象となります。

(1)退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者期間(任意継続期間を除く)があること

(2)退職時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること

ただし、これは資格喪失後の継続給付のひとつとして支給されるため、退職日に働いている場合は、支給対象となりません。この点は絶対におさえておきたいポイントです。

なお、年次有給休暇を消化したまま退職するケースは(働いていないものとして)対象となります。

このように出産退職の場合、出産手当金がもらえるケースともらえないケースがある、ということを覚えておくとよいでしょう。

クレジット

佐佐木由美子

プロフィール

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)

社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロン(サロン・ド・グレース)を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。

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