お金を「ふやす」には…投資ってホントに儲かるの?
銀行の預金じゃダメ?「少額・ローリスク」で始める投資法とは
2015年9月10日
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの高山一恵です。生きていくうえで絶対欠かせないのが、お金。毎日使っている身近なものだけど、意外に知らないことも多いのでは。この連載では、きちんと生活するためにぜひ知っておきたい「お金の超キホン」を、わかりやすくご紹介します。 今回は、「投資」について考えます。投資というと、一部のお金情報に詳しい特別な人のもの、素人が手を出すとソンする、といったイメージを持つ人もいるかと思いますが、そんなことはありません。リスクを抑えながら、上手に利用する方法はあります。低金利でなかなか預貯金だけではお金を増やせない今、検討してみる価値はあります!
登場人物
桜子:新入社員
潤 :入社3年目
絢香:入社7年目の29歳
桜子:「先取り貯蓄」(⇒ お金が貯まる人が実践している「貯まる貯蓄方法」とは)を実践して、貯蓄はできるようになってきたのですが、普通預金も定期預金も利息ってほとんどつかないんですね…。
潤:ほんとだよね。桜子ちゃん、そもそも普通預金の金利ってどれくらいか知ってる?
桜子:いえ、どうせ低いんだろうなと思ってたからちゃんと考えたことなかったです。(笑)
絢香:そういう人多いわよね。現在、大手都市銀行の普通預金の金利は「0.02%」なの。
例えば、100万円を普通預金に1年間預けておくと、1年後の利息は「200円」。そこから税金も引かれるから手取りはもっと少なくなるのよ…。
桜子:えー! 利息にも税金がかかるんですか!!
潤:確か20.315%の税金が引かれているんですよね。20%だった税金が平成25年から復興税が上乗せになって20.315%になったんですよね。そうすると、利息の手取りは、160円にもならないってことですね…。
絢香: そうよ。よく知ってるわね。普通預金の金利がいかに低金利かをさらに認識するには「72の法則」を覚えておくといいわよ。
桜子:72の法則?
絢香:72の法則とは、元本を2倍にするためにかかるおおよその年数がわかる法則なの。
計算式は 「72÷金利=お金が2倍になる期間」。
この計算式に普通預金の金利を当てはめると、 「72÷0.02=3600年」
桜子:えーっ! 3600年もかかるってことですかー? 今から3600年前って何時代でしたっけ?
潤:縄文時代じゃない?(笑) つまり、縄文土器を使ってた時代から今までずっとあずけて100万円が200万円になるってことか! はぁ、気が遠くなる話だなあ(笑)
絢香: 定期預金にしても、銀行や預け入れ期間によるけど、高い銀行で(5年)金利0.55%。これでも、72÷0.55=約131年かかることになるわね。外資系やネット専業の銀行は金利が高めだけど、それでもこの程度よ。
桜子: えー! ほんと、生きてるうちにお金増えないですよね(笑)。どうしたらいいんでしょうか?
絢香:そこで考えてみたいのが「投資」なのよ。
投資っていうと「元本割れ」「ギャンブル」というイメージが強くて嫌がる人が多いんだけど、お金を増やすには投資にトライすることを真剣に考えなくちゃいけないの。
桜子:確かに、投資って損するってイメージが強くてあまり良いイメージがないけど。
でも、お金を増やしたいから、ちょっと考えてみようかな。投資っていうと株っていうイメージですけど、具体的にはどんなものがあるんですか?
絢香:そうよね。ひとくちに投資といっても、株、投資信託、FXなどいろいろあるわよね。それぞれ特徴があって、「当たれば大きいけどリスクも大きい」というものもあるのよね。初心者は特に、ハイリスクハイリターンのものではなく、リスクの小さいものから考えたいわね。
<主な投資方法>
- 株式投資 – 企業の株を買うことで、企業に直接投資するもの
- 投資信託 – 個人から集めたお金を、まとめてプロが運用するもの
- FX – 外国為替保証金取引。海外の通貨を売買して利益を出す
- 債券 – 国や自治体、企業が発行する証券で、国が発行するのは「国債」。あらかじめ期限や利率が決まっており、“国にお金を貸す”ようなもの
- 不動産投資 – マンションなどのオーナーとして賃料を得る
- 金投資 – 純金積み立てや金地金、金先物取引などがある。金は世界中で換金でき、価値がゼロになることはない。ただし、利子はつかない。相場の金額の上がり下がりの差額で利益を得る
- 外貨預金 – ドルやユーロといった、外貨で資産を持つ。為替リスクはある。円とは違う形の資産を持つことで、リスク分散になる。
絢香: ハイリスク、ハイリターンといえば、株式、FXかしらね。株は思惑どおりに株価が上がると大金を得られる可能性があるのよね。
例えば、ユニクロを展開しているファーストリテイリング。今では誰もが知っている有名企業だけど、フリースで大ブレイクするまでは株価はすごく低かったの。フリースブレイクしてそこから2年で株価は60倍になっているからすごいわよね。
桜子:えっ!60倍ってことは100万円が6000万円になるってことですかー!しかも2年で!すごいですね!!
絢香: そうでしょ。その代わり、倒産してしまったら出資したお金は水の泡になる可能性もあるからね。
潤:FXは少額でも大きな取引ができるって聞きましたけど。
絢香:そうよ。FXは取引業者に一定の証拠金(保証金)を担保として預け入れると、その何倍もの外貨を売買できるという取引なの。
外貨預金や外貨MMFなどの通常の外貨投資の場合、手持ちの金額以上の外貨を買うことはできないの。1ドル=100円の場合に、10万円の資金で運用できるのはどうがんばっても1000ドル。でも、証拠金の何倍もの外貨を売買することができるFXなら、10万円の証拠金で1万ドルを運用することができてしまうというわけ。
潤:儲かったら大きそうだけど、為替が予測と反対の値動きをしたときには厳しそうだな…。
絢香:不動産投資も最近、人気なのよね。というのも、老後の年金に期待できないから家賃収入を得て老後の年金の足しにしたいという人が増えているのよ。
不動産投資は、株やFXと違って値動きで利益を得るというよりは、家賃収入で安定的に利益を得る方法だから、よい物件を選ぶことができれば安定してるわよね。
桜子:物件選びが重要そうですね。うーん、不動産は金額が大きいし、ローンを組まなくちゃいけないから私にはハードル高いな。
絢香:どうしても不動産はある程度まとまった金額になってしまうからハードルが高いわよね。その点、今の時代、株やFXなら数万円からスタートできるから不動産に比べると始めやすいわね。
潤:金投資もよさそうですね。
絢香:“有事のときの金”といって、世界的に経済が不調になると、世界中どこでも使える共通通貨である金が注目されて値上がりする傾向にあるわね。金積立を利用すれば、毎月3000円から始められるし、万が一のときに備えて資産の一部を金でもっておくのはいいわね。
桜子:債券はどうなんでしょう?銀行や郵便局に行くと、個人向け国債を勧められることがあります。
絢香:債券は償還期限といって満期が設けられているんだけど、満期までは定期的に利子を受け取ることができて、基本的に満期まで持っておけば、額面金額である償還金が戻ってくるの。
ただし、発行元が倒産したりしたら元本は保証されないから、その点が定期預金と違うわね。個人向け国債なら1万円から買えるわよ。
桜子:「投資信託」はどんなものなんですか?ちょっとイメージがわかないんですけど。
そうかもね。「投資信託」は、投資の初心者が始めやすい、投資の入門編のひとつなのよ。
潤:僕、投資信託、始めたんですよ。投資信託って、僕たち個人投資家から集めたお金をひとつの大きなお金としてまとめて、運用のプロであるファンドマネージャーが経済動向などを見ながら株や債券、不動産などの商品で運用する商品のことですよね。
プロが運用してくれるし、分散投資もできるし、少額から始められるし、で、初心者にはやりやすいと思って。
桜子:へえー。「どの会社の株があがりそう」とか「下がりそうだから売らなくちゃ」とか、自分で考えなくてもいいってことですね。確かに始めやすそう。
<投資信託>
- 現在発売されているもので約5000種類
- 利回りはそれぞれの投資信託で違うが、最近は好調な投資信託が多く、
5%以上の利回りで運用している投資信託も多い
<例>
-
利回り5%の場合
⇒100万円を預けた場合、1年後は105万円。10年後は約162万円(複利運用)
※普通預金に預けた場合は、10年後には100万2000円。
比べると、約60万円、違ってくる(※税金は考慮していない)
桜子:そんなに違うんですねー!
絢香:ただし、リターンもそれなりに大きいけど、経済状況によっては大きく値下がりするし、元本割れの可能性もあるので、そこは注意が必要よ。
知っておきたい「ドル・コスト平均法」とは
桜子:元本割れって聞くと、怖いですね…。リスクを小さくする方法ってあるんでしょうか?
絢香:初心者には投資信託の積立がおすすめよ。
潤:まさに僕、それやってますよ!
絢香:それは。投資信託積立というのは、毎月決められた日に自動的に指定した銀行口座から一定額が引き落とされ、投資信託を買いつけていく仕組みのことをいうのよ。投資信託は、主要銀行や証券会社などで販売されているの。
通常、投資信託の積立の最低投資金額は、月々1万円以上となっているんだけど、ネット証券を利用すれば、1000円からの積立も可能よ。
桜子:聞いてると、銀行の自動積立定期みたいな感覚でできるんですね。しかも1000円からだったらトライしてもいいかも。
絢香:「少額で始める」ってことは、リスクを負わないためには大切なことだからね。
投資信託積立は、購入する口数が決まっているわけではなく、「1万円分」など一定の金額を指定して、その金額で買える口数を買う、というものなの。だから、購入時の基準価額が安ければ口数を多く、高ければ口数を少なく買い付けることになるわけ。
このような方法を「ドル・コスト平均法」と呼ぶの。これは、投資のキーワードの一つなのよ。ちょっと面倒だけど、投資を考えるなら知っておきたいことね。
<「ドル・コスト平均法」とは>
- 「ドル・コスト平均法」は、値動きのある商品を小分けにして買い付けるので、高値で一気に買ってしまうのを避けることができるという点がメリット。
- 毎月一定の口数を購入するよりも平均購入単価を安く抑えることができる。
- 相場の状況が芳しくないときは、投資信託の基準価額(投資信託の値段)は下がるが、積立で投資信託を買い付けている場合には、下がったときに口数を多く買い付けることができる。
- 例えば、下の図のように「毎月1万円・3カ月投信積立」の場合、
-
1カ月目は基準価額が1万円なので、買い付けは1口
2カ月目、基準価額が2000円になると、買い付けは5口
3カ月目は基準価額が5000円なので、買い付けは2口 - ⇒3カ月目で売却した場合は…
-
3カ月で、投資金額3万円に対して、買い付け口数は8口。
3カ月目で投信を売るとなると、基準価額は5000円で口数は8口なので、
5000円×8口=4万円になり、1万円、儲かったことになる
(※投資信託の売却は、売却日の15時の基準価額×買い付け口数で行う)
- 例えば、下の図のように「毎月1万円・3カ月投信積立」の場合、
桜子:なんだか損してるんじゃないかと思ったけど、そういうことなんですね! 高いときと安いときをならして、トータルで利益を出そうってことですね。
絢香:思ったより簡単に始められそうでしょ。でも、投資はどんなものでも元本割れのリスクもあることは確かだから、勉強しながらやるようにしなくては。
潤: 最近は、「NISA」がありますよね。
桜子:「NISA」って何ですか?
絢香:「少額投資非課税制度」といって、投資金額100万円分までの株式投資や投資信託で得られた配当金などが非課税になる制度よ。去年(2014年)始まったの。このための非課税口座を開く必要があるんだけどね。
桜子:本当にいろんな商品があるんですねぇ…。最初は、どうやって始めたらいいんですか?
絢香:まずは、投資自体に慣れることが大切だから、損しても精神的にダメージを受けない金額で始めるといいわよ。
不動産投資以外は、数千円~数万円で取引できるから、習うより慣れろでやってみるといいかもしれないわよ。自分に合いそうなのはどれか、まず、よく考えてみて。
ただ、勉強ももちろん必要なので、書籍やセミナーなどでやりながら勉強も並行でやっていくことが大切ね。そして、いろいろと試してみると自分に向いている向いていないがわかるの。得意分野をみつけて得意分野でがんばった方がお金の増え方も早いわよ。大まかな方針が決まったら、証券会社に相談してみることかしら。いまはインターネット上で運営しているネット証券もいろいろあるから、調べてみて。
◎Kazue先生の今回のポイント◎

プロフィール

ファイナンシャルプランナー
高山一恵さん
エフピーウーマン所属ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。2002年にファイナンシャルプランナーの資格を取得したのを機にお金との正しい付き合い方を啓蒙する魅力に目覚める。2005年4月に創業メンバーとして「女性のためのお金の総合クリニック」株式会社エフピーウーマンの設立に参画。現在、同社のメイン講師として全国で講演活動を行い、人生に不可欠なお金の知識を伝えている。雑誌や新聞での連載をはじめ、テレビ・ラジオにも出演するなど精力的に活動し、明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書に『35歳までにはぜったい知っておきたい お金のきほん』(アスペクト)など。エフピーウーマンHP、オフィシャルブログ「お金を人生の味方につけるお金の教養レッスン」、「お金の教養が身につく マネーセミナー」(受講料無料)。