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金融リテラシー入門:テーマ「住宅購入」ダイジェスト版

全15章からなる「金融リテラシー入門」の講座のうち、「住宅購入」の授業をダイジェスト版でお届けします。

高い治療代をおさえる方法とは?

1カ月でおおむね8万円以上の医療費負担をしたら要チェック

2014年5月27日

自分や大切な家族が突然の病気になったとき、思わぬ高額な医療費の請求にあ然としたら…。今回は、そんなときに備えて知っておきたい「高額療養費制度」についてご紹介します。

週末のある晩、玲子さんの家に電話のコールが鳴り響きました。それは、妹の真奈さんが、外出先で具合が悪くなり、そのまま救急車で搬送されたという連絡でした。

緊急入院したものの、幸い1週間程度で退院できるとのこと。その後は、通院をしながら仕事には復帰できると言われました。

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しかし、退院が間近になって、真奈さんは焦りました。医療費が高すぎて、払いきれるかどうか不安になったのです。

仕事の収入は不安定で、1人暮らしをしている真奈さんには、貯金がほとんどありません。また、民間の保険にもまったく加入していませんでした。そこで、「治療代を何とか工面してほしい」と玲子さんに相談をしてきたのです。

玲子さんは早速、医療費がどのくらいになるか、病院の窓口に確認してみました。すると、「20万円程度はかかる見込み」と言われ、驚いてしまいました。

支払い額をおさえる方法があった!

このように医療費が高額になるとき、高額療養費制度があるのをご存知でしょうか? 1ヵ月(1日から末日まで)にかかった同じ医療機関の医療費の自己負担額が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた金額が戻ってくる制度です。

自己負担限度額は、所得や年齢によっても異なりますが、70歳未満で一般所得(月収53万円未満※住民税非課税者を除く)の人ならば、「8万1000円+(総医療費-26万7000円)×1%」となります。

簡単にいうと、おおむね8万円以上の医療費負担がある場合は、それ以上高くなっても、後からお金が戻ってくる仕組みです。

仮に、がんの放射線治療など、高額な治療が長期に及ぶ場合は、4ヵ月目からは自己負担限度額が引き下がり、70歳未満で一般所得の人は4万4400円になります。

今回のように、自己負担が20万円の場合、約11万6千円が高額療養費として、払い戻されることになります。これは、大きいですね。申請をしなければ、お金は支払ったまま戻ってきません。

しかし、高額療養費制度を利用して、お金が戻ってくるまでには、病院から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行うため、3ヵ月程度の時間がかかります。つまり、一旦は高額の医療費を自分で支払う必要があり、経済的負担が大きいことは否めません。

そこで、活用したいのが「限度額適用認定証」です。これを事前に健康保険の保険者(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、国民健康保険など加入している健康保険)に申請して、「限度額適用認定証」を交付してもらい、保険証と一緒に病院や保険薬局の窓口に提示すれば、一般所得の場合は自己負担限度額の約8~9万円程度の支払いで済みます。

一部の健康保険組合では、「付加給付」の制度を実施しており、さらに自己負担が少なくて済む場合もあります。

「限度額適用認定証」を利用するためのポイント

このように便利な「限度額適用認定証」をうまく活用するには、ちょっとしたコツがあります。そのポイントをチェックしましょう。

その1:事前申請を忘れずに!
限度額適用認定証を利用するには、事前に加入する健康保険組合等に申請をして、認定証を交付してもらう必要があります。申請月の初日より前にさかのぼって交付できないので、利用したい場合はなるべく早く申請をしておきましょう。

その2:外来もOK!
従来、限度額適用認定証を使えるのは入院に限られていましたが、2012年4月からは外来の診療でも利用できるようになりました。認定証の有効期間は、最長で1年の範囲まで。通院治療が長引くときは、長めに認定証が利用できる期間を確保しておきましょう。

その3:認定証を保険証と一緒に提示しよう!
限度額適用認定証は、健康保険証と一緒に病院等の窓口に提示します。医療費の支払いは、自動的に自己負担限度額となり、後で手続きをする必要はありません。

限度額適用認定証の申請は、基本的には本人が行うものです。あらかじめ医療費が高くなりそうなときには、会社に相談して申請書を取り寄せてもらうとよいでしょう。会社の証明等は不要ですので、自分で健康保険組合等のホームページより書類をダウンロードして、直接申請することもできます。

玲子さんが妹のためにとったアクションとは?

玲子さんは、入院している妹の真奈さんに代わって、「限度額適用認定申請書」を入手して、申請を代行しました。突然の病気や入院など、本人が申請をできない場合は、その理由を記載して、家族等が申請を代行することもできるのです。

玲子さんのおかげで、スムーズに「限度額適用認定証」を交付してもらうことができた真奈さん。退院するときの治療費を大幅におさえることができました。

病気やケガは、あなた自身にも、また大切な家族にも、いつ何時起こるかわかりません。そうしたときに、「限度額適用認定証」のことを思い出して、ぜひご活用ください!