金融リテラシー教育推進委員会の設立と「金融リテラシー入門」講座の開設について
~大学における金融教育の普及と自立した金融行動を実践する人材育成を目指して~
金融リテラシー教育推進委員会
金融リテラシー教育推進委員会(以下「本推進委員会」)は、2013年1月に、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役:岡本 和彦、以下「Visa」)が、国内の大学における金融教育の普及を目的とし、金融・消費者教育に携わる有識者6名(※1)をメンバーとし、立ち上げた委員会です。発足以降、本推進委員会では、 Visaと共同で大学での講座の新設を目指しプログラムの開発を進め、国内の大学では初となる金融教育の講座を、2013年4月に国立大学法人横浜国立大学全学教養教育科目して開講致し、2015年で3年目を迎えました。金融教育は、現代社会において金融に関する健全な意思決定を行う上で極めて重要な個人の生活技術を培う教育です。本推進委員会は、「金融リテラシー入門」講座(以下、本プログラム※2)を広く展開し、大学での金融教育の普及と自立した金融行動を実践する人材育成を目指します。
◆背景
2008年の金融危機を契機に、金融教育は、多くの国において個人の重要な生活技術を培う教育としてより強く認識されるようになりました。国際的な動向としては、2008年5月に、金融教育についての情報共有・分析等を実施する組織である「金融教育に関する国際ネットワーク(International Network on Financial Education、INFE)」がOECDにより組成されました。そして、2012年6月に開催されたG20ロスカボスサミットでは、「金融教育のための国家戦略のためのOECD/INFEハイレベル原則」が承認され、金融教育のさらなる推進に向けた提言がなされました。
国内においても、2012年8月に「消費者教育推進法」が国会で成立し、また国際動向を受けて、同11月に金融庁金融研究センターで「金融経済教育研究会」が発足、2013年4月末に同研究会報告書が公表され、これに基づいて、金融広報中央委員会が事務局となり、金融庁・消費者庁・文部科学省を始め金融関連団体で構成される金融経済教育推進会議が、同委員会内に新たに設置されました。また2013年6月に閣議決定された消費者教育推進法に基づく2013年から5カ年の基本方針には、消費者教育の一環として金融経済教育が位置づけられ、政策的にも金融教育が一層推進され、その重要性が再認識されるとともに普及の機運が高まっています。
一方で、Visaが2012年3月に日米の大学生に対し実施した調査(「金融教育に関する日米大学生アンケート」)では、小・中・高等学校のいずれかで金融教育を受けた経験があると回答した大学生は、日本の大学生が39.7%(124名)に対し、米国の大学生は72.2%(249名)であり、約2倍の差があるという結果が明らかになりました。特に大学においては、大学生が消費者として金融トラブルに巻き込まれるリスクが高いという事実がある一方で、知識と実践力を習得するための体系化された金融教育の教材が国内にあまり存在せず、学生が自主的に金融知識を学ぶ機会も少ない状況でした。このような状況を鑑み、本推進委員会は、大学における金融教育の普及に向けて本プログラムの開発に着手し講座を新設するに至りました。
◆金融リテラシー教育推進委員会メンバー※1
西村 隆男 (ニシムラ タカオ) 座長
国立大学法人横浜国立大学 名誉教授
金融経済教育推進会議 委員 2013年6月~
消費者教育推進会議 委員 (会長代理2013年3月〜、会長2015年7月〜)
金融広報中央委員会委員 2011年6月~
日本消費者教育学会会長 2007年10月 ~
阿部 信太郎 (アベ シンタロウ)
城西国際大学 経営情報学部 総合経営学科 准教授
日本消費者教育学会常任理事 2010年10月~
経済教育学会理事 2012年9月~
柿野 成美 (カキノ シゲミ)
公益財団法人消費者教育支援センター 専務理事 首席主任研究員
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)
日本消費者教育学会常任理事 2013年10月~
日本FP協会評議員 2014年 7 月~
鎌田 浩子 (カマタ ヒロコ)
国立大学法人北海道教育大学教育学部 教授
北海道消費生活審議会 委員 2010年3月~
日本消費者教育学会常任理事 2010年10月~
川西 諭 (カワニシ サトシ)
上智大学 経済学部 教授
行動経済学会理事 2007年5月~
橋長 真紀子 (ハシナガ マキコ)
札幌学院大学 経営学部 教授
日本消費者教育学会 評議員・事務局次長 2010 年10月~
東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザー 2011年1月~
新潟県消費生活審議会委員 2014年10月~
新潟県消費者教育推進委員会委員 2014年10月~
松浦 義昭 (マツウラ ヨシアキ)
金沢大学 人間社会学域
経済学類 専任講師
経済学博士(大阪大学)
◆本プログラムの概要※2
本プログラムは、英国やOECDなど国際的に広く認知されている金融リテラシーの基本要素である下記4つの柱と金融ケイパビリティの基本要素である社会性をもう一つの柱として構成されています。各項目から、受講生が形成できる能力についても着目して講義を進めていきます。
- 日々のお金の管理:
計画的にお金を使ったり、貯めたりすることができるようになる - 計画的な資金管理:
生活設計(ライフプランニング)を行い、中長期の必要な資金計画(ファイナンシャル・プランニング)を立てることができるようになる - 金融に関わる基礎知識:
基本的な金融知識とその理解を学ぶことによって、意思決定ができるようになる - 貯蓄や投資に関わる金融商品の選択:
金融に関わる合理的意思決定ができるようになる - 社会的責任:
持続可能な社会に向けた責任ある金融上の意思決定ができるようになる
目的: 個人の金融行動を通じてライフプランニング能力やキャリア開発能力を身に着けるための、基礎的な金融に関する知識や実践力を習得することを目指します。自立した個人として行動するための資質を養うことを目的としています。
内容: 毎月の給与から控除される保険や税金、外国為替の仕組み、住宅ローンの金利計算方法、資産管理の方法などをテーマとして取り上げ、大学生が社会に出てから直面する金融行動において必要な知識を学びます。さらに、交通事故による逸失利益計算の仕組みや病気や入院などの時に役に立つ保険制度について、万が一リストラや失業などにより困難な問題に直面した時に必要な金融行動における問題解決の方法、また理想の生活を送る為に必要となる資金準備について考えるセカンドライフプランニングなどを習得します。学習形式は、「ケーススタディ形式」とし、各回、課題として指定された教材に基づいてケーススタディと補足講義を受けます。的確な知識に基づいた交渉力、分析力、意思決定能力などの実践力を修得できるしくみになっており、学生の積極的な参加が求められます。